家族が亡くなった後、「遺品整理は誰がするのか」という疑問に直面する方は少なくありません。子どもが複数いる場合は誰が中心になって行うのか、疎遠だった親族の遺品整理まで自分がやらなければならないのか、費用は誰が負担するのか。法律上のルールと現実の事情が入り交じり、判断に迷うケースが非常に多いのが実情です。
結論から言えば、遺品整理は原則として法定相続人が行うものとされています。遺品は法的には相続財産であるため、相続する人がその整理の権利と責任を負うのです。しかし、相続人がいない場合や相続放棄した場合、親族間で意見が対立する場合など、状況によって「誰がするのか」の答えは変わってきます。
本記事では、遺品整理は誰がするのかという疑問について、法的な観点からの基本ルール、ケース別の対応方法、費用の負担者、親族間のトラブルを防ぐためのポイント、そして自分で行う場合と業者に依頼する場合の判断基準まで、網羅的に解説いたします。
Contents
遺品整理は誰がする?法的な基本ルール
遺品整理を誰がするかを考える上で、まず押さえておくべきは法律上のルールです。
遺品整理は法定相続人が行う
遺品は法律上、故人の相続財産として扱われます。そのため、遺品整理を行う権利と責任は、法定相続人に帰属します。法定相続人とは、民法で定められた故人の財産を相続する権利を持つ人のことで、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹の順に相続権があります。
重要なのは、遺品整理は相続と表裏一体の関係にあるという点です。遺品を整理するということは、相続財産を管理・処分することを意味します。つまり、相続する意思のない人が勝手に遺品を整理することは、法的には認められないのです。
相続人が複数いる場合は全員に権利がある
法定相続人が複数いる場合、遺品整理の権利と責任は相続人全員に及びます。一人の相続人が独断で遺品を処分したり持ち出したりすると、他の相続人との間で「勝手に処分された」「形見がほしかったのに」といったトラブルに発展する可能性があります。
そのため、遺品整理を始める前に、相続人全員で話し合い、方針や役割分担、費用の負担方法について合意を得ることが原則です。
遺言書に指示がある場合はそれに従う
故人が遺言書を残しており、遺品の処分方法や特定の遺品を特定の人に渡すよう指示している場合は、その内容が優先されます。自筆証書遺言が見つかった場合は、開封せずに家庭裁判所で検認の手続きを行う必要がある点にも注意しましょう。
遺品整理は誰がする?ケース別の対応
「遺品整理は誰がするのか」という問いの答えは、状況によって異なります。よくあるケースを整理しました。
配偶者がいる場合
故人に配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人となるため、遺品整理の中心的な役割を担うのが一般的です。子どもがいる場合は、配偶者と子どもが相続人となり、協力して遺品整理を行います。配偶者が高齢で体力的に作業が難しい場合は、子どもたちが主体となって進め、配偶者の意向を確認しながら作業を行うとよいでしょう。
子どもだけが相続人の場合
配偶者がすでに亡くなっている場合や未婚の故人の場合、子どもたちが遺品整理を行う主体になります。兄弟姉妹間で「誰が中心になるか」「費用はどう分担するか」を事前に話し合い、合意を得ておくことがトラブル防止の鍵です。
遠方に住んでいる子どもがいる場合は、近くに住んでいる子どもが現場での作業を担当し、遠方の子どもは費用を負担するなど、公平な分担を工夫しましょう。
親や兄弟姉妹が相続人の場合
子どもがいない故人の場合、相続順位に従って親、次いで兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が相続人となるケースでは、故人との関係が疎遠になっていることも多く、「なぜ自分が遺品整理をしなければならないのか」と感じる方もいらっしゃいます。しかし、相続する以上は遺品整理の責任が伴うのが法的な立場です。
相続人全員が相続放棄した場合
相続人全員が家庭裁判所に相続放棄の申述を行った場合、遺品整理の責任を負う相続人がいなくなります。この場合、故人の債権者や利害関係者の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任し、清算人が遺品整理を含む財産の処分を行います。
相続放棄をした後でも、相続財産清算人が選任されるまでの間は、相続放棄をした元相続人に「相続財産の管理義務」が残る場合があります。具体的には、遺品を積極的に処分する義務はありませんが、財産が毀損しないよう保存する義務は残るとされています。
身寄りがない場合
故人に相続人が一人もいない場合や、相続人の存在が確認できない場合は、最終的に自治体が対応することになります。賃貸物件の場合は、大家や管理会社がやむを得ず特殊清掃や遺品整理を手配し、費用を故人の相続財産から回収するか、回収できない場合は自己負担となるケースもあります。
賃貸物件で亡くなった場合の大家・管理会社の立場
賃貸物件で入居者が亡くなった場合、大家や管理会社が直接遺品整理を行う義務はありません。遺品整理の義務はあくまで相続人にあります。ただし、相続人が見つからない場合や対応が遅れる場合は、衛生上の理由から大家が費用を立て替えて清掃や遺品整理を行わざるを得ないケースもあります。
この場合、大家は後に相続人や連帯保証人に対して費用の請求を行うことができます。
遺品整理の費用は誰が負担するのか
遺品整理を誰がするかと同時に気になるのが、「費用は誰が払うのか」という問題です。
原則は相続人が負担する
遺品整理の費用は、原則として法定相続人が負担します。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議の中で費用負担の割合を話し合って決めるのが一般的です。均等に分担する場合もあれば、作業を主導した相続人が立て替え、後から精算する場合もあります。
故人の財産から支払うケースも
故人の預貯金から遺品整理の費用を支払うことも可能です。民法改正により、各相続人は故人の銀行口座から法定相続分の3分の1まで(上限150万円)を仮払いとして引き出すことができるようになりました。手元に資金がない場合は、この制度を活用して遺品整理の費用に充てることができます。
相続放棄した場合は負担義務がなくなる
相続放棄の手続きを行った場合、遺品整理の費用を負担する義務はなくなります。ただし、相続放棄は死亡を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があり、遺品を処分してしまうと放棄ができなくなるリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
賃貸物件の場合は連帯保証人が最優先
賃貸物件で孤独死などが発生した場合、原状回復費用を含む遺品整理の費用は、連帯保証人、法定相続人、大家の順で負担義務が生じます。連帯保証人は賃借人と同等の責任を負うため、相続放棄とは無関係に支払い義務が残ります。
「遺品整理は誰がする」をめぐるトラブルとその防止策
遺品整理を誰がするかをめぐって、親族間でトラブルになるケースは少なくありません。よくあるトラブルとその対策を紹介します。
トラブル1:勝手に遺品整理を進めてしまう
一人の相続人が他の相続人に相談せず遺品整理を始めてしまい、「形見にしたかったものを勝手に捨てられた」「価値のあるものを持ち去られた」といったトラブルに発展するケースがあります。
対策としては、遺品整理を始める前に必ず相続人全員で話し合い、方針・役割分担・スケジュールについて合意を取ることが最も重要です。話し合いが難しい場合は、書面(メールやLINEでも可)で方針を共有しておくとよいでしょう。
トラブル2:費用負担をめぐる対立
「自分は遠方に住んでいて作業に参加できないのだから、費用を出す義務はない」「作業した自分だけが負担するのは不公平だ」といった費用負担をめぐる対立も頻繁に起こります。
費用の分担方法は遺品整理を始める前に決めておきましょう。作業に参加する人は労力を提供し、参加できない人は費用を多く負担するなど、各自の状況に応じた公平な分担を検討することが大切です。
トラブル3:疎遠な親族の遺品整理を押し付けられる
長年疎遠だった叔父や叔母が亡くなり、他に相続人がいないために自分に遺品整理の責任が回ってくるケースもあります。この場合、相続放棄を行えば遺品整理の義務を免れることができます。ただし、相続放棄の期限は3か月と短いため、早めに弁護士や司法書士に相談しましょう。
トラブル4:遺品の中に借金が見つかる
遺品整理の過程で、故人に多額の借金があったことが判明するケースもあります。この場合、プラスの財産とマイナスの債務を比較した上で、相続するか放棄するかを判断する必要があります。借金が見つかっても、遺品を処分していなければ相続放棄は間に合う可能性があるため、すぐに専門家に相談してください。
遺品整理は自分でする?業者に依頼する?
遺品整理を誰がするか決まった後、次に考えるのが「自分たちで行うか、業者に依頼するか」という問題です。
自分で行ったほうがよいケース
- 荷物の量が比較的少ない
- 近くに住んでいて頻繁に通える
- 家族で協力して作業できる人数が確保できる
- 費用をできるだけ抑えたい
- 故人の遺品に一つひとつ丁寧に向き合いたい
業者に依頼したほうがよいケース
- 荷物の量が多い(一軒家や長年住んだ住居)
- 遠方に住んでいて頻繁に通えない
- 体力的に作業が困難(高齢の遺族など)
- 賃貸物件の退去期限が迫っている
- 孤独死が発生し特殊清掃が必要
- 精神的な負担が大きく自力で向き合うのがつらい
- 親族が協力的でなく一人で対応しなければならない
すべてを自力で行うか、すべてを業者に任せるかの二択だけでなく、仕分けと貴重品の捜索は自分で行い、搬出と処分は業者に任せるという「ハイブリッド方式」も有効な選択肢です。
遺品整理を業者に依頼する場合のポイント
業者に遺品整理を依頼する場合は、以下の点を押さえておくことで、安心して任せることができます。
訪問見積もりで明確な金額を確認する
電話やメールだけでなく、必ず現場を見てもらった上で正確な見積もりを出してもらいましょう。「見積もり金額=最終請求金額」を書面で保証してくれる業者が最も信頼できます。
複数社から相見積もりを取る
最低でも2〜3社から見積もりを取り、金額・作業内容・対応の質を比較検討してください。相見積もりを取ることで適正な費用感がつかめ、悪徳業者を避けることにもつながります。
まとめ
遺品整理は誰がするのかという問いに対する法的な答えは、「法定相続人が行う」です。遺品は相続財産であるため、相続する意思のある人がその整理の権利と責任を負います。相続人が複数いる場合は全員が当事者であり、一人の独断で進めるのではなく、事前に話し合って合意を取ることがトラブル防止の鍵となります。
相続人全員が相続放棄した場合は相続財産清算人が、身寄りがない場合は自治体が対応するケースもあります。費用の負担は原則として相続人ですが、故人の預貯金の仮払い制度を利用したり、保険を活用したりすることで負担を軽減する方法もあります。
自分たちだけで遺品整理を行うのが難しい場合は、遺品整理の専門業者に依頼することで、短期間で適切に作業を完了させることができます。
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この記事について
大邑政勝
- 家財整理専門会社エバーグリーン 代表
- 一般社団法人 家財整理相談窓口 理事
- 一般社団法人 日本特殊清掃隊 理事
特殊清掃、遺品整理、火災現場復旧など10年にわたる現場経験と多種の資格を有し、豊富なノウハウで顧客第一のサービスの提供に努める。



