家族が亡くなった後、葬儀費用に加えて遺品整理にも数十万円単位の費用がかかると知り、「遺品整理に使える補助金はないのだろうか」と考える方は少なくありません。特に、一軒家に大量の荷物が残されている場合や、孤独死の現場で特殊清掃が必要な場合は、費用が数百万円に達することもあり、経済的な負担は非常に大きくなります。
結論から言うと、「遺品整理」そのものを直接の対象とした補助金は、全国的にはほとんど存在しません。しかし、「空き家の片付け」や「家財処分」「生活困窮者支援」といった名目で、遺品整理の費用に充てることのできる補助金や助成制度は一部の自治体に存在します。また、遺品整理とは別に、葬儀費用の一部を受け取れる公的な給付金制度も複数あります。
本記事では、遺品整理に関連する補助金・助成金の現状と具体的な制度、活用できる公的支援の一覧、申請の手順と注意点、そして補助金以外で遺品整理の費用を安くする方法まで、網羅的に解説いたします。
Contents
遺品整理に補助金はあるのか?現状を正しく理解する
まず、遺品整理の補助金に関する現状を正確に把握しておきましょう。
「遺品整理」名目の補助金は基本的に存在しない
国の制度として、遺品整理の費用を直接補助する制度は現在のところ設けられていません。遺品整理は個人の財産処分に該当するため、公的支援の対象外とみなされるのが一般的です。
そのため、「遺品整理 補助金」と検索して期待する方が多い一方で、実際には直接的な補助は受けられないケースがほとんどというのが現実です。
ただし、関連する名目で利用できる制度はある
遺品整理そのものは対象外でも、「空き家対策」「家財処分」「生活困窮者支援」といった関連する名目で設けられた制度を活用できる場合があります。これらの制度は自治体ごとに内容が異なるため、お住まいの地域で利用できる制度を個別に確認することが重要です。
遺品整理に活用できる「空き家の片付け」関連の補助金
遺品整理の補助金として最も有力な選択肢が、自治体が設けている「空き家の片付け」に関する補助制度です。
空き家バンク登録による補助金
多くの自治体では、空き家の有効活用を促進するために「空き家バンク」という制度を運営しています。空き家バンクとは、空き家の所有者と利用希望者をマッチングする仕組みで、自治体が窓口となって登録・紹介を行います。
空き家バンクに登録した物件に対しては、家財の処分費用や片付け費用を補助する制度を設けている自治体があります。この「家財処分」の中に遺品整理に相当する作業が含まれるため、実質的に遺品整理の補助金として活用できるのです。
補助金の対象となる作業
空き家の片付けに関する補助金の対象となる作業は自治体によって異なりますが、一般的には以下のような費用が含まれます。
- 家財道具の搬出・運搬費用
- 不用品の処分費用
- 粗大ゴミの回収費用
- ハウスクリーニング費用
- 簡易リフォーム費用(一部の自治体)
ただし、遺品の仕分けや形見分けなど、遺品整理特有のサービスは補助対象外となることが多い点には注意が必要です。
補助金の金額の目安
空き家の片付けに関する補助金の上限額は自治体によって異なりますが、5万円から20万円程度が一般的です。一部の自治体では上限30万円まで支給するケースや、費用の2分の1から3分の2を補助するケースもあります。
ただし、遺品整理の実際の費用が数十万円以上になることを考えると、補助金でカバーできるのはごく一部にとどまることが多いのが実情です。それでも、利用できる制度があるのであれば活用しない手はありません。
補助金を受けるための主な条件
空き家の補助金を利用するには、通常、以下のような条件を満たす必要があります。
- 空き家バンクに物件を登録していること
- 物件が補助対象地域内にあること
- 片付け後に物件を売却・賃貸・解体など有効活用する見込みがあること
- 税金の滞納がないこと
- 過去に同一物件で同様の補助を受けていないこと
条件は自治体ごとに細かく異なるため、必ず事前にお住まいの自治体の窓口や公式サイトで詳細を確認してください。
遺品整理の費用負担を軽減できるその他の公的支援
遺品整理そのものの補助金ではなくても、故人が亡くなった際に利用できる公的な給付金や支援制度があります。これらを活用することで、遺品整理に回せる資金を確保することも可能です。
葬祭費(国民健康保険・後期高齢者医療保険)
故人が国民健康保険または後期高齢者医療保険に加入していた場合、喪主(葬儀を行った方)に対して「葬祭費」が支給されます。金額は自治体によって異なりますが、1万円から7万円程度が一般的で、東京23区では7万円が支給されるケースもあります。申請先は故人が住んでいた市区町村の役所で、申請期限は葬儀を行った日の翌日から2年以内です。
埋葬料・埋葬費(社会保険)
故人が会社員として社会保険(全国健康保険協会や健康保険組合)に加入していた場合は、「埋葬料」として5万円が一律支給されます。申請先は加入していた健康保険の窓口(協会けんぽまたは健康保険組合)で、申請期限は死亡日の翌日から2年以内です。
生活福祉資金貸付制度
社会福祉協議会が運営する生活福祉資金貸付制度では、低所得世帯や高齢者世帯を対象に、緊急小口資金(上限10万円)や総合支援資金の貸付を行っています。遺品整理の費用に直接充てることが認められるケースもあるため、経済的に困窮している場合は最寄りの社会福祉協議会に相談してみましょう。
葬祭扶助(生活保護受給者向け)
故人が生活保護を受けていた場合、または喪主が生活保護受給者で葬儀を行う余裕がない場合は、「葬祭扶助」として最低限の葬儀費用が自治体から支給されます。金額は自治体によって異なりますが、12歳以上の場合は最大約20万円程度です。申請は葬儀を行う前に福祉事務所で行う必要があります。
高額療養費制度の還付
故人が亡くなる前に高額な医療費を支払っていた場合、高額療養費制度によって自己負担限度額を超えた分が還付されることがあります。還付金は相続財産に含まれるため、遺品整理の費用に充てることも可能です。
遺品整理の補助金・助成金の申請手順
補助金や助成金を利用する場合、正しい手順で申請を行う必要があります。一般的な流れを以下にまとめます。
ステップ1:自治体の窓口に問い合わせる
まず、故人の住所地や物件所在地の自治体に連絡し、遺品整理に利用できる補助金・助成金制度があるかどうかを確認します。問い合わせ先は、住宅課、空き家対策課、福祉課、社会福祉協議会などが一般的です。
ステップ2:必要書類を準備する
補助金の申請には、通常、以下のような書類が求められます。
- 補助金申請書(自治体指定のフォーマット)
- 物件の登記事項証明書
- 固定資産税の納税証明書
- 遺品整理業者の見積書
- 物件の写真
- 申請者の本人確認書類
自治体によって必要書類は異なるため、事前に確認しておきましょう。
ステップ3:申請書を提出する
必要書類を揃えたら、自治体の窓口に申請書を提出します。多くの場合、申請は作業を開始する前に行う必要があります。先に遺品整理を完了させてから申請しても、補助金が受けられないケースがあるため、この順序には特に注意してください。
ステップ4:審査・交付決定
申請書の提出後、自治体による審査が行われます。審査期間は自治体によって異なりますが、2週間から1か月程度かかるのが一般的です。審査が通ると「交付決定通知書」が届き、その後に作業を開始します。
ステップ5:作業完了後に実績報告書を提出
遺品整理の作業が完了したら、作業後の写真や領収書などを添えて実績報告書を提出します。報告内容が確認された後に、補助金が振り込まれます。
補助金以外で遺品整理の費用を抑える方法
補助金の活用には条件や手続きのハードルがあるため、補助金だけに頼らず、他の方法でも費用を抑える工夫をしましょう。
事前に自力で片付けられる範囲を処分する
業者に依頼する前に、明らかなゴミや不用品を自治体のゴミ収集で処分しておくと、搬出量が減って費用が下がります。衣類や書籍、雑誌類は量が多い割に自力で処分しやすく、効果が大きいです。
複数業者から相見積もりを取る
遺品整理の費用は業者によって大きな差があります。最低でも2〜3社から訪問見積もりを取り、金額と作業内容を比較検討しましょう。
遺品の買取サービスを活用する
遺品の中に価値のある家具、家電、貴金属、ブランド品などがあれば、買取対応の業者に依頼することで、買取金額を作業費から差し引いてもらえます。
故人の預貯金から仮払いを利用する
民法改正により、各相続人は故人の銀行口座から法定相続分の3分の1までの金額を仮払いとして引き出すことが可能になりました。遺品整理の費用に充てられる場合がありますので、金融機関に相談してみましょう。
生命保険金を活用する
故人が生命保険に加入していた場合、受取人は死亡保険金を受け取ることができます。生命保険金は相続財産には含まれないため、相続放棄をしても受け取りが可能です。この保険金を遺品整理の費用に充てることもできます。
まとめ
遺品整理そのものを直接対象とした補助金は、全国的にはほとんど存在しないのが現状です。しかし、自治体が設けている「空き家の片付け」に関する補助金を活用することで、遺品整理の費用の一部を軽減できる可能性があります。補助金の上限額は5万円から20万円程度が一般的で、空き家バンクへの登録や事前申請などの条件を満たす必要があります。
また、葬祭費や埋葬料などの公的給付金、生活福祉資金貸付制度、葬祭扶助といった制度も併せて活用することで、故人の死亡に伴う経済的負担を総合的に軽減することが可能です。
補助金や公的支援だけで遺品整理の費用を全額カバーすることは難しいですが、事前の自力片付けや相見積もり、遺品の買取活用など、他の節約方法と組み合わせることで、負担を大幅に抑えることができます。まずはお住まいの自治体に問い合わせ、利用できる制度がないか確認することから始めてみてください。
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この記事について
大邑政勝
- 家財整理専門会社エバーグリーン 代表
- 一般社団法人 家財整理相談窓口 理事
- 一般社団法人 日本特殊清掃隊 理事
特殊清掃、遺品整理、火災現場復旧など10年にわたる現場経験と多種の資格を有し、豊富なノウハウで顧客第一のサービスの提供に努める。

