寒い冬の季節に気を付けたいのが、ノロウイルスによる感染性胃腸炎、いわゆる食中毒です。数年前までは毎年1万人近くもの人がノロウイルスが原因の食中毒に感染しており、新型コロナウイルスの感染拡大により人々の衛生観念が高まってからも、4千人近くの人がノロウイルスに感染しています。
ノロウイルスの恐ろしいところは、感染力がとにかく高いこと。わずか10~100個ほどのウイルスであっても人々に感染し、嘔吐や下痢などの辛い症状で人々を苦しめます。特に受験を控えているお子様がいるなどの場合、家庭内でノロウイルス対策を施すことが重要になるでしょう。
そこで今回は、家庭でできるノロウイルスへの感染予防対策や、発生時の消毒方法について、厚生労働省の公開している情報を参考に解説していきます。
Contents
ノロウイルスとはどのようなもの?
ノロウイルスと感染性胃腸炎
ノロウイルスとは、感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)を引き起こす原因となるウイルスの一種です。ノロウイルスによる感染性胃腸炎は一年を通して発生する病気ですが、特に寒い冬のシーズンに多く発生し、中でも11月から2月の発生が多いという特徴があります。
ノロウイルスは口から体内に侵入すると腸管で増殖し、嘔吐や下痢、腹痛、微熱などを引き起こすとされています。これらの症状は通常、ウイルス感染から約24~48時間で発生、1~2日ほど続いた後に治癒し、後遺症は残りません。しかし、子どもや高齢者などの場合は重症化することもあり、決して気は抜けない病といえます。
ノロウイルスの感染経路
「ノロウイルスは口から体内に侵入する」と前述しましたが、より具体的には以下の2つの経路から感染することが分かっています。
①食品からの感染(経口感染) | ウイルスが付着した食品を口にすることで感染する経路です。ウイルスに感染した人が調理した食べ物を食べたり、ウイルスを蓄積した二枚貝などを十分に加熱せずに食べたりすることで感染します。 |
②患者の便や吐しゃ物からの感染(接触感染) | ウイルスが含まれた便や吐しゃ物に手で触れてしまい、かつウイルスが付着した手で口に触れてしまうことで感染します。 |
ノロウイルスは感染力が非常に強いため、わずかな数であっても感染してしまう危険性があるとされています。ノロウイルスへの感染を予防するためには、口にウイルスが入ってしまう環境をつくらないことが重要です。
ノロウイルスへの感染予防対策
手洗いの徹底
ノロウイルスは、手に付着したウイルスが口に入ってしまうことが主な感染経路のひとつです。そのため、こまめに手洗いをし付着したウイルスを洗い流すことが感染予防対策の基本となります。
外出した後やトイレに行った後、調理や食事の前には必ず手を洗うようにしましょう。石けんやハンドソープをつけ、手のひらや甲によくこすりつけるようにして洗うとともに、指先や爪の間、指の間などといった汚れの残りやすい部分も丁寧に洗いましょう。手首も忘れずに洗うようにしてください。手洗い後は十分に水で洗い流し、ペーパータオルやハンカチなどでよく拭きましょう。
手洗いは、新型コロナウイルスの感染対策にもなります。石けんやハンドソープが無い場合でも、水だけでもある程度の効果はあるので、こまめな手洗いを徹底しましょう。
二枚貝を食べる時は十分に加熱
カキやシジミ、ハマグリなどの二枚貝は、ノロウイルスを内臓にため込んでいるリスクがあります。これは、感染症流行時に下水道などを通じてノロウイルスが海に流入し、カキなどの二枚貝が摂取してしまうためです。そのため、特に感染症が流行する冬の時期は、カキなどの二枚貝を食べる時には生食をせず、十分に加熱をしてから食べることが、有効な感染予防対策となります。
ノロウイルスは、食品の中心部を85~90℃で90秒以上加熱すれば、感染性がなくなるとされています。カキの場合は十分に加熱すると身が縮み、ウイルスをためこんでいる茶色や黒色の内臓部分が固まるので、それが目安になります。
調理器具等の消毒
まな板や包丁などの調理器具等を適宜消毒することも、有効な感染予防対策です。特に二枚貝を調理した場合には、調理後忘れずに調理器具等を消毒するようにしましょう。
調理器具等の消毒は、85℃以上の熱湯で1分間以上、熱湯消毒を行なうか、次亜塩素酸ナトリウムが含まれた市販の漂白剤を濃度が0.02%(2lの水に対して漂白剤10ml)になるように希釈し、それに漬け込むことで行なえます。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎が発生した時の消毒対応
便や吐しゃ物への対処
家族などが感染症胃腸炎が疑われる症状により下痢や嘔吐をした場合には、便や吐しゃ物を適切に処理することが非常に重要になります。
便や吐しゃ物を処理する際には、感染から身を守るために、まずは使い捨ての手袋、マスク、エプロンを身に付けましょう。便や吐しゃ物は、ふきんやペーパータオルなどで拭います。この際、汚れた面をそのまま使うと、ウイルスによる汚染を広げてしまうことになるので、汚れた面は折り込みながらぬぐい取るようにします。使用したふきんやペーパータオルはビニール袋に入れて密閉して処分してください。
便や吐しゃ物を拭い取ったら、消毒作業を行ないます。消毒には、次亜塩素酸ナトリウムが含まれた市販の漂白剤が有効です。次亜塩素酸ナトリウムの濃度が0.1%(500mlの水に対して漂白剤10ml)になるように希釈し、ふきんやペーパータオルに十分浸してから、便や吐しゃ物がかかった場所を覆うか、拭き上げるようにして消毒しましょう。ちなみに、床から1mの高さから吐いた場合、吐しゃ物は最大で約2m飛び散るという実験結果があるので、広い範囲をしっかり消毒するようにしてください。また、次亜塩素酸ナトリウムには金属を腐食させる作用があるので、消毒後は水ぶきをしましょう。
便や吐しゃ物の処理が終わったら、使用した手袋やマスクなどをビニール袋に入れて密閉し処理してください。
衣類の消毒
便や吐しゃ物が衣類に付着してしまうと、そこからもウイルス感染の危険性が生じます。特に嘔吐の場合は、ほぼ必ず嘔吐した本人の衣服にも吐しゃ物が付着しますから、必ず消毒するようにしましょう。
衣類の消毒は調理器具と同様、85℃以上の熱湯で1分間以上熱湯消毒するか、市販の漂白剤を次亜塩素酸ナトリウムの濃度が0.02%(2lの水に対して漂白剤10ml)になるように希釈し、それに漬け込むことで行なえます。消毒が済んだら、他の洗濯物とは別で洗濯をしましょう。
ドアノブや便座等、感染者が触れた箇所の消毒
ドアノブや便座、蛇口、手すりなど、感染者が触れた触れた箇所にもウイルスが残っている可能性があるので、消毒するようにしましょう。次亜塩素酸ナトリウムの濃度0.02%の消毒液を作り、ペーパータオル等を使い拭き上げ消毒をするのが効果的です。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食させる作用があるので、消毒作業後には水ぶきをするようにしてください。
ノロウイルスの消毒で知っておきたいこと
ノロウイルスには次亜塩素酸ナトリウムが有効
今回、ノロウイルスの消毒方法として、次亜塩素酸ナトリウムが含まれた漂白剤を使用することが有効であるとご紹介してきました。では、次亜塩素酸ナトリウムと同様に消毒に用いられるアルコールは、ノロウイルスに効果があるのでしょうか?
厚生労働省の情報によると、一般的なアルコール消毒はノロウイルスに対してはあまり効果が高くない、とされています。
新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以降、街中のあちこちに消毒用のアルコールが設置されるようになりました。こうした消毒用アルコールを使っていれば、なんとなく「他のウイルスや菌にも十分な効果がある」と思いがちですが、油断は禁物。ノロウイルスのように、アルコール消毒の効果があまり高くないウイルスや菌も存在するのです。
特に便や吐しゃ物の処理など、ノロウイルスへの感染リスクが高い状況の場合には、確実に消毒できるよう次亜塩素酸ナトリウムの漂白剤を使用する。このことは鉄則として是非覚えておいてください。
漂白剤は酸性・弱酸性の洗剤と混合しない
次亜塩素酸ナトリウムの入った漂白剤を酸性・弱酸性の洗剤に混ぜると、有毒なガス(塩素ガス)が発生し、ガス中毒に陥り命の危険があります。漂白剤を使って消毒をする時には必ず、他の洗剤等と混ざらないようにしてください。このほか、パッケージに記載されている使用上の注意を確認することも忘れずに。
塩素ガスには刺激臭があり、吸い込むと鼻の奥やのどにツンと刺すような痛みが走るとされています。変な臭いに気付いたらすぐにその場を離れ、窓やドアを開けるなどして換気をしましょう。刺激臭がなくなったら、混合してしまった洗剤や漂白剤、あるいはそれらが付着したものや場所を、水で十分に洗い流してください。体に違和感が残る場合は、すぐに医者に相談しましょう。
清掃や各種消毒作業は専門業者にお任せください
今回は、家庭でできるノロウイルスへの感染予防対策や、発生時の消毒方法について解説してきました。本コラムでは、新型コロナウイルスに対する感染予防や消毒方法について解説した記事も掲載しております。こちらも合わせてご参照ください。
また、エバーグリーンは、新型コロナの感染予防および感染者が出た施設の除染について専門的なノウハウを保持しており、ダイヤモンドプリンセス号での除染作業にも参画するなど確固たる実績も有しております。
清掃や各種消毒作業についてお悩みの方はぜひ、エバーグリーンまでご相談ください。
この記事について
大邑政勝
- 家財整理専門会社エバーグリーン 代表
- 一般社団法人 家財整理相談窓口 理事
- 一般社団法人 日本特殊清掃隊 理事
特殊清掃、遺品整理、火災現場復旧など10年にわたる現場経験と多種の資格を有し、豊富なノウハウで顧客第一のサービスの提供に努める。