日本では1年間に発生する火災の件数をご存知でしょうか?
平成29年度に消防庁が発表したデータによると、なんと年間3万9,373件、1日あたり108件の火災が発生しています。
普通に生活しているとあまり実感が湧きませんが、火災はいつ誰でも遭う可能性がある災害なのです。
この記事では、実際に火災被害にあった際の後始末の方法について解説いたします。もし火災が起きてしまったとき迅速な復旧作業ができるように、対応方法や注意点を確認しましょう。
Contents
家が焼けたあとの後始末、どうすればいい?
鎮火して自身の安全が確保できた後にすべき手続きをご紹介します。
罹災証明書を発行する
罹災(りさい)証明書とは、被害状況を把握するために消防署が発行する証明書で、税金の雑損控除や証書の再交付等の申請ををする際に必要となります。指定された用紙に罹災者本人かその親族が必要事項を記入し消防署に提出をすると、証明書を発行することができます。この際印鑑が必要になるので、確保しておきましょう。
また被害の状況にもよりますが、申請期間は罹災後2週間から1ヶ月程の場合が多く比較的余裕があるため、急ぐ必要はありません。
保険会社に連絡
火災保険に加入している場合は、保険会社への連絡も忘れずにしましょう。通常、連絡をすると保険会社の担当者が被害状況を確認しに来ます。正確に被害状況を把握してもらうため、清掃作業は調査が済んでからの方がよいでしょう。
保険の適用範囲に注意
保険の適用範囲は大抵、自身が所有している「建物」と「家財」までとなっており、これらが被害を受けない限り保険は適用されません。つまり、焼けた後の臭いや煤は元々所有していた財産ではないため保険の適用外ということになります。完全に保険で補うことはできないので注意が必要です。さらに日本には「失火責任法」という法律があり、もらい火で火災が起きた場合は、保険が適用されないどころか火元の家主に損害賠償を求めることすらできない可能性があります。
公共サービスを停止する
電話、電気、ガス、水道といった公共サービスを一時的に停止します。
電話 | 電話会社へ連絡。113番が電話故障時の連絡先。 |
電気 | 電気会社へ連絡。(地域によっては消防が連絡している場合もある) |
水道 | 水道会社へ連絡。給水停止の手続きをする。 |
ガス会社については、通常消防へ通報があった火災であれば自動的に連絡がいくため自分で手続きをする必要はありません。
火災の大きさで後始末の方法は違う
火災の大きさによって後始末の方法は異なります。比較的被害範囲の狭いボヤであれば自力で片付けることも可能ですが、半焼や全焼の場合、業者の力を借りずに原状回復をするのは不可能です。
以下では火災の被害状況別に、後始末の方法をご紹介します。
ボヤの後始末方法
早期に鎮火を行い被害を抑えることができれば、家具の処分や清掃のみで復旧が可能です。しかし被害範囲が狭いといえど火事であることには間違いなく、適切な処理が求められます。
まずは煤掃除
煤とは煙や灰に含まれる炭素の微粒子で、物が燃焼した際に発生します。煤は粒子が微小で不溶性のため水拭きや洗剤といった一般的な方法ではなかなか落ちません。
壁や天井に付着した煤は、お湯に溶かした重曹やエタノールといった家庭にあるもので十分落とすことができます。方法はスポンジにこれらを染み込ませてこするだけとシンプルで、費用も安く済むのでおすすめです。
また煤を掃除する際は、天井→壁→床、階段であれば上から下に進めていきましょう。煤は高い所から低い所に落ちます。例えば床の清掃をした後に天井を掃除すると、煤が床に落ち2回床を掃除しなければいけなくなります。清掃前に掃除する順番を確認しましょう。
煤掃除の後は消臭
煤掃除が済んだら部屋の消臭作業をします。焦げ臭い匂いは煤を落とせばほとんどとれますが、それでもとれない部屋に充満した匂いはどうすればいいのでしょうか?
焦げ臭さをとるには以下の3つの方法があります。
- 換気
- 部屋中を乾拭き
- 全面リフォーム
換気は最も簡単な方法ですが、煤を掃除する際に既に換気されている方がほとんどだと思いますので、検討するのは下2つの方法でしょう。部屋中の乾拭きによって取りきれなかった煤を落とすことができますが、時間と体力に余裕がないと現実的な方法とはいえません。そのため、リフォーム可能な部屋で金銭的余裕があるなら業者に頼んで床や壁を張り替えるのも手です。全ての方に当てはまる方法ではありませんが、手間がかからず確実に匂いを消すことができます。
家具の処分
燃えて使えなくなってしまった家電や家具の処理方法は自治体によって異なります。地域によっては無料で回収してくれたり粗大ゴミや一般ゴミとして処理できることもありますが、そういったサービスが一切なく自分で民間企業を探し処理を依頼しなければいないこともあります。詳しくはお住いの自治体ホームページをご確認ください。
家が半焼したときの後始末方法
半焼ほどの被害規模になると自力でできることは限られるため、業者に頼らざるを得ません。業者に依頼すべきことや注意点を解説します。
自分でできること
室内の清掃やゴミの処理を業者に任せている間に「貴重品・思い出の品の回収」と「近隣へ挨拶」を行いましょう。
貴重品・思い出の品の回収
日中は家に作業員が出入りしていますが、夜間は誰もいないため貴重品等が盗まれてしまう可能性があるため、事前に業者と相談をして早いうちに回収すると良いでしょう。
近隣へ挨拶
そして近隣に挨拶ができるようであればこの期間中にしておくとよいでしょう。隣家に燃え移る前に鎮火が完了し近隣に被害がなかったとしても、精神的ショックを受けた方もいるでしょうし、作業中は工事車両などが行き来することになるので多少なりとも迷惑はかけます。どのような形であれ、お詫びの気持ちを示しておくことが重要です。
専門業者に依頼すべきこと
業者に依頼した方がよいこと3つあります。
- 清掃
- リフォーム
- 消臭
清掃
半焼ほどの規模になると煤や燃えカスが大量に発生します。
これらを適切に処理をしないと、部屋の匂いが完全に取れなかったり病気になったりする恐れがあるため、確実に清掃を行える専門業者に依頼しましょう。
リフォーム
火災箇所の原状回復を行います。半焼となると火災箇所の損傷が激しくリフォームに知識と経験が必要になりますので、火災後のリフォーム経験がある会社を探し依頼しましょう。
消臭
ボヤであれば清掃などで匂いを消すことができますが、半焼の場合焼け焦げている箇所も多く専門の消臭会社に依頼しなければいけません。
家が全焼したときの後始末方法
家が全焼してしまった場合、自分でできることはほぼありませんし依頼すべき業者も限られています。
新しい住まいを探す
新たな自宅が完成するまでの住まいを探しましょう。仮住まい先としてあげられるのは主に「民営住宅」「公営住宅」の2種類です。
民営住宅とは民間会社が運営しているアパートやマンションのことで、不動産屋に相談すれば用意してくれます。
一方公営住宅は市や区など行政が管理する住宅で、相場より安く借りることができます。公営住宅へ入居できる条件が自治体ごとに設けられていますので、もし希望される場合は自治体に連絡をしてみましょう。
解体業者に依頼
解体業者に連絡し見積もりを出してもらいます。見積もりは無料で行ってくれる業者がほとんどですので、必ず見積もりを見た上で依頼するかどうかを決めましょう。
解体作業の注意点として、工事が始まるまでに近隣住民や店舗に挨拶を済ませておく必要があります。解体作業中は騒音や振動によって周りに迷惑をかけることがありますので、トラブルを起こさないためにも必ず事前に断りを入れなければいけません。
解体費用は数百万から数千万円
解体費用は骨組みの種類や建物の大きさ、さらに作業日数や作業員の数によって変動するため具体的な数値は見積もり時まで分かりませんが、数百万から数千万円と一般家屋の解体費用よりも高額になることが多いです。燃えてしまった木材や大量の火災ゴミは処分方法が限られており、処分費がかかってしまうからです。
行政の補助制度について
高額な解体費用の負担を軽減する方法として、火災保険の他に行政の廃棄物処理手数料の減免制度を利用するものがあります。
減免制度を取り入れている大阪市では、事前に申請をすると廃棄物15トンまで手数料が全額免除されるなど、制度利用によって経済的損害をカバーすることができます。
地域によって制度の有無や内容が変わりますので、詳細はお住まいの行政に問い合わせてください。
後悔しない業者の選び方
「この業者はやめておけばよかった…」という事態を防ぐために、依頼前に以下を確認してみてください。
- 口コミの評価
- 相場より安すぎ、高すぎないか
- 許可・保険の有無
口コミの評価
会社のホームページ、SNS等で会社の評判を確認しましょう。1件でも悪い評価がみられる業者には注意が必要です。
相場とかけ離れていないか
各業者の費用相場は大体決まっています。複数の会社を比較し、相場とかけ離れている業者には依頼しない方が安心です。こういった業者は費用を削減するために雑な突貫工事を行っていたり、単にぼったくりであったりする可能性が高いので、値段の安さで判断するのはできるだけ避けてください。
許可・保険の有無
リフォームや家屋の解体作業を行うには専門の資格が必要になりますが、依頼しようとしている会社が該当する資格を有しているか調べておくことも重要です。
例えば家屋の解体作業を行うには「解体工事業」の許可を得ていなければいけませんが、稀に許可がないにもかかわらず不法に作業を行っている会社も存在します。
そして仮に復旧作業中に会社側のミスによるトラブルが発生したとき、きちんと賠償してくれるのかどうかも聞いておきましょう。「賠償責任保険」等の保険に加入している会社であれば問題はありませんが、保険に加入していなかったためにトラブルを起こしても賠償金を支払えないといった事例もあります。事前の確認が不可欠になります。
なお弊社は解体業を始め清掃・解体に必要な許可を複数取得しており、数々の火災復旧作業の経験を基に依頼者様に合った作業をご提案しています。
どの業者に依頼すればいいか分からずお困りの方は、一度エバーグリーンまでお問い合わせください。24時間ご相談を受け付けています。
突然の火災に備えておく
火災はいつ起こるか分かりません。罹災後のシミュレーションをしておくことも大切ですが、普段から備えておくことでもしもの時により適切な行動がとれます。
火災保険
多くの火災保険は直接損害を受けた分が補償範囲となりますが、特約をつけることによって仮住まい費用や家財まで補償してくれる保険もあるため、たまに保険内容を確認してみるとよいでしょう。
持ち出す貴重品の確認
火災発生時はまず自身の身を守ることが最優先ですが、通帳や印鑑といった手元にないと困る貴重品については普段から家族で置き場所を共有しておき、避難する際に誰かが持ち出せるようにしておくことも備えになります。
まとめ
今回は火災発生後の復旧方法について解説しました。注意点やポイントはたくさんありますが、まずはどんな規模の火災であれ自身の安全を確保することが最重要です。
その上で復旧作業をする際は、被害状況やかかる費用を鑑みながら適切な対応をとれるとよいですね。
この記事について
大邑政勝
- 家財整理専門会社エバーグリーン 代表
- 一般社団法人 家財整理相談窓口 理事
- 一般社団法人 日本特殊清掃隊 理事
特殊清掃、遺品整理、火災現場復旧など10年にわたる現場経験と多種の資格を有し、豊富なノウハウで顧客第一のサービスの提供に努める。