近年、社会的な課題として注目されつつある「孤独死」。孤独死は、ご遺体の発見までに時間がかかることが多く、それまでの間にご遺体の腐敗や損傷が進むことで部屋へのダメージも大きくなっているケースも多数見られます。
弊社エバーグリーンは、孤独死による特殊清掃も承っており、多くの現場に足を運んでまいりました。だからこそ、孤独死はどうして起こるのか、どういった特徴があるのかを社会全体でご理解いただくことで、孤独死が少しでも起きづらくなることを願っています。
国土交通省や民間調査機関の調査によると、孤独死(誰にも看取られず自宅などで亡くなるケース)は年間約3万件以上に及ぶとも言われており、高齢化・単身世帯の増加に伴い今後もさらに増えることが予測されています。社会全体でこの問題を正しく理解し、孤立を防ぐ取り組みが急務となっています。
そこで今回は、「孤独死」が発生する状況について具体的にご紹介するとともに、「孤独死」の特徴や今後の展望についてもまとめてご説明します。
「孤独死」が発生する状況
病などによる突然死
厚生労働省の調査によると、日本人の主な死因として「悪性新生物(がん)」が最も多く、次いで「心疾患」、「老衰」、「脳血管疾患」、「肺炎」という順が続いています(2020年時点)。なお、最新の統計(2023年)では老衰が3位から2位に上昇し、高齢化の進展がより顕著に表れています。年間の死者数は心疾患がおよそ20万人、脳血管疾患は約10万人です。
これらのうち、心疾患と脳血管疾患は、悪性新生物や肺炎とは異なり病の進行や予兆がないことが多く、突然に死が訪れるために、孤独死になりやすい特徴があります。
心疾患および脳血管疾患いずれも、基本的には高齢であるほどリスクが高いですが、20代・30代の若者世代でも罹ることはある病です。また、男女比で見ると1:3〜4ほどの割合で、男性の方が多い傾向があります。
また、近年は冬場の入浴における「ヒートショック」による心疾患や脳血管疾患が増加しており、孤独死に至るリスクのひとつとして認識され始めています。入浴中に亡くなった場合、ご遺体が風呂に長時間浸かることになり、ご遺体の損傷も深刻になる傾向があります。そうした場合、特殊清掃にも時間がかかることになります。
ヒートショックの予防策としては、脱衣所や浴室をあらかじめ温めておくこと、湯温を高くしすぎないこと(41度以下が目安)、入浴前後の水分補給などが有効とされています。一人暮らしの方は特に意識して取り組んでいただくことをおすすめします。
熱中症に起因する死
熱中症も、予兆がなく突発的にかかる病であるために、孤独死につながりやすい病気のひとつです。心疾患や脳血管疾患と比べれば死者数こそ少ないものの、2000年代後半から増加傾向にあり、多い年で年間約1,700人が熱中症で亡くなられています。近年の気候変動による記録的猛暑が続く中、熱中症による死者数は増加傾向が続いており、今後も高齢化および気温の上昇に伴い、さらに増えていくことが懸念されています。
心疾患や脳血管疾患と同様に、熱中症も高齢であるほど死者数が多い傾向があります。もちろん、加齢による身体の衰えも要因と考えられますが、冷房の使用を嫌ったり、日常的に使用する習慣がない高齢者が多いことも要因だと言えるでしょう。
また、男女で比較をすると男性の方が熱中症での死亡が多く、特に20代〜60代までの現役世代の死亡数が多い傾向があります。これは、男性の方が屋外で仕事をする割合が多いこと、夏場でも厚着をする機会が多いこと、スポーツ活動の強度が高いこと、あるいは筋肉量が多く体温が上がりやすいことなど、複数の要因が考えられます。
孤独死者数を月別に見ると、7月と8月の死者数が多く、これは熱中症による孤独死が多くなることが要因と考えられます。熱中症も含め夏場の孤独死は、遺体の腐敗進行も早くなるために、特殊清掃の作業範囲が広くなったり、より念入りな作業が必要になる傾向があります。
高齢者の熱中症予防には、周囲の見守りが非常に重要です。自治体が提供する「緊急通報システム」や「安否確認サービス」、民間のIoTセンサーを活用した見守りサービスなども普及してきており、離れて暮らす家族の安否確認手段として注目されています。
老衰死
核家族化が進んだことにより、近年は一人暮らしの高齢者が増加しています。こうした独居中の高齢者が自宅で人知れず老衰により死を迎えた場合、それは孤独死となる可能性が高くなります。
厚生労働省の調査によると、2020年の老衰による死者数はおよそ13万人。うち9万6千人が女性となっており、男性と比べて女性の方が老衰死の割合がかなり大きいことが分かります。近年は老衰死がさらに増加傾向にあり、2023年の統計では死因の第2位となっています。長寿化が進む一方で、独居高齢者の孤独死リスクも高まっているといえます。
しかし、男性の場合は女性と比べ、地域内での住民同士のコミュニケーションが希薄である傾向があります。そうした場合、老衰死を迎えた時に周囲に気付かれるまでに時間が長くかかり、その間にご遺体の腐敗が進んでしまい、特殊清掃の作業範囲が広くなったり、より念入りな作業が必要になります。
一人暮らしの高齢者が増える中、各自治体では「地域包括支援センター」を通じた見守り支援や、宅配業者・郵便局員などによる異変察知サービスが広まっています。ご家族やご近所の方も、日頃からこまめな連絡・声かけを心がけることが、孤独死予防の大きな一歩になります。
セルフネグレクトや貧困による病死・衰弱死・餓死
セルフネグレクトや貧困により人が生きていく上で必要になる保健・衛生活動や食事を行なわない状態になってしまい、結果として健康を害したり衰弱したりして死に至り、孤独死となってしまうケースがあります。
セルフネグレクトや貧困による孤独死については、網羅的な調査がまだ無く国内での実態把握は出来ていない状況です。しかし、病死や老衰死などと比べて、セルフネグレクトや貧困は20代・30代の若者世代でも起きるという特徴があります。
特にセルフネグレクトは、社会から孤立しており周囲とコミュニケーションをとっていないケースが多く、発覚までに時間がかかりやすい孤独死の一つであると言えます。一説には、孤独死のうち相当数にセルフネグレクトが関係しているとさえも言われています。また、セルフネグレクトの状態になると、自宅をゴミ屋敷にしてしまうケースが多いです。そうした状態で孤独死すると、特殊清掃の作業範囲はより広く、作業内容もより難しくなります。
セルフネグレクトの背景には、精神疾患(うつ病・認知症など)、社会的孤立、経済的困窮などが複合的に絡み合っていることが多いとされています。本人が助けを求めることが難しい状態にあるため、周囲の気づきと早期の支援機関への連絡が重要です。生活に困っている方や心配な知人・ご近所がいる場合は、地域の福祉事務所や「よりそいホットライン(0120-279-338)」などへご相談ください。
自殺
民間団体の調査によると、孤独死のうちおよそ65%は先にご説明してきたような病死が死因となっていますが、次いで多い死因が「自殺」となっており、全体のおよそ1割を占めています。
警察庁の資料を見てみると、国内の自殺者数はおよそ10年前から減少傾向にあるものの、依然として2万人以上もの人々が自殺により命を落としている現状があります(2020年時点)。その後、2021年以降も2万人超の水準が続いており、特に女性や若年層の自殺者数が増加傾向にあることが社会問題となっています(警察庁統計より)。性別で見ると男性がおよそ1万4千人、女性は約7千人。年代別に見ると最も多いのが40代、次いで50代となっていますが、20代・30代の自殺もそれぞれ約2,500人と決して少なくありません。むしろ高齢者と比較して健康的リスクが小さい分、自殺は若者世代の孤独死において比較的大きな割合を占めており、社会が抱える大きな課題であると言えます。
厚生労働省の調査によると、自殺のうち約6割が自宅で発生しています。以上のことから、自殺の発生場所としては自宅が最も多いことが類推されます。
自殺に関する相談窓口として、「いのちの電話(0120-783-556)」や「よりそいホットライン(0120-279-338)」が24時間対応で利用できます。ご自身や身近な方が深刻な悩みを抱えている場合は、ためらわず相談機関に連絡することをお勧めします。
発生状況から見る「孤独死」の特徴
女性よりも男性の孤独死が多い
「病などによる突然死」「熱中症に起因する死」「自殺」といった要因において、女性よりも男性の方が発生頻度が多いことから、孤独死は女性よりも男性の方が多い特徴があります。実際に民間団体の調査によると、孤独死全体の8割以上が男性である旨の調査結果が出されています。
背景には、男性は女性と比べて地域コミュニティへの参加や、日常的な人間関係の構築が苦手な傾向があるという社会的特性が指摘されています。定年退職後に人との接点が急激に減少するケースも多く、孤立リスクが高まりやすい状況にあります。
50代・60代・70代の孤独死が多い
年を重ねるごとに健康リスクが増大するという観点から、孤独死は高齢世代で発生件数が多い特徴もあります。民間団体の調査によると、50代・60代・70代の孤独死が特に多い結果が出ています。一方で、80代以上は孤独死の件数は少ない結果が出ていますが、これは80代以上になると病院へ入院したり、高齢者施設に入居したりすることが多く、自宅で独居している人があまり多くないことが要因であると考えられます。
近年は50代・60代の「若い高齢者」の孤独死が増加傾向にあるとも言われており、定年退職後の社会的孤立や、離婚・死別による単身生活への移行が背景の一つとして挙げられています。地域のコミュニティ活動やボランティアへの参加が、こうした孤立を防ぐ有効な手段として注目されています。
夏場の孤独死が多い
民間団体の調査によると、孤独死は7月・8月に多く起きていることが分かります。これは夏場になると「熱中症に起因する死」の発生リスクが高くなることが要因だと考えられます。件数が増えることに加え、先述のとおり夏場は遺体の腐敗進行も早くなるために、特殊清掃のご要望はかなり多くなりますし、作業環境および内容も大変になることが多いです。
夏場は発見が数日遅れるだけでも腐敗が急速に進むため、清掃作業が大規模になりやすく、費用も高くなる傾向があります。また、腐敗臭は近隣住民にも影響を及ぼすことがあるため、早期発見・早期対応が非常に重要です。定期的な安否確認の仕組みを地域や家族で整えておくことが大切です。
「孤独死」の今後
今後、日本はさらに高齢化が進むことを考えると、高齢であることが根本的なリスクのひとつとなっている「孤独死」は、より一層増加していくと推測されます。もちろん、セルフネグレクトや貧困による孤独死、あるいは自殺による孤独死も、決して軽視してはならない社会的な問題であることは言うまでもありません。
2025年現在、国や自治体では孤独死対策として「孤独・孤立対策推進法」が施行されるなど(2024年4月施行)、制度的な取り組みが本格化しています。また、民間企業によるIoTを活用した見守りサービスや、AIを用いた安否確認システムなど、テクノロジーを活用した孤立防止の手段も広まりつつあります。
孤独死による特殊清掃も含め、最近は片付けや清掃を専門に扱う業者の数も急増しています。しかし残念ながら、中には作業内容が不十分であったり、作業料金が不適正な悪質業者も数多くあるのが現状です。
特殊清掃を業者に依頼する際には、作業内容や料金だけではなく、業者の実績やノウハウにも着目していただき、慎重に選んでいただくことを強くおすすめします。
信頼できる業者を選ぶ際のポイントとして、会社情報(所在地・代表者名)が明示されているか、作業実績や施工事例が公開されているか、見積もりが無料で明確かどうか、「一般廃棄物収集運搬許可」などの必要な許可を取得しているかどうかを確認することが重要です。
この記事について
大邑政勝
- 家財整理専門会社エバーグリーン 代表
- 一般社団法人 家財整理相談窓口 理事
- 一般社団法人 日本特殊清掃隊 理事
特殊清掃、遺品整理、火災現場復旧など10年にわたる現場経験と多種の資格を有し、豊富なノウハウで顧客第一のサービスの提供に努める。






